中東のペルシャ湾が現在緊張関係にあるようだ。
ここ数ヶ月小さなトラブルは起こっていたようだ。即ち「サウジアラビアやUAEなどのタンカーが攻撃を受けた」とか「日本とマーシャル諸島船籍のタンカーが攻撃を受けた」「アメリカの無人偵察機が撃墜された」といった事件である。
そしてそれらをきっかけとしてアメリカがイランに攻撃を仕掛けようとしたと云う事である。最終的には花札大統領がGOサインを出さなかったことで、実行はされなかったようである。
彼がGOを出さなかった最大の理由は、アメリカ軍がイランの革命防衛隊などに報復攻撃をした場合の犠牲者の数が150人と予測され、無人攻撃機撃墜の損害に比べ「釣り合いが取れない」と判断したからだと、本人がマスコミの前でそう言っていた。
私はこの一連のプロセスを見ていて、このアメリカ大統領の価値観や判断基準のポイントがどこに在るのか判ったような気がした。
TVの報道番組などで外交の専門家がよく口にしていたのだが、その通りだったのである。
曰くこの大統領は「ビジネスマンだから積極的に戦争は行わない」と言い、「その代わりにぎりぎり最後の局面まで圧力をかけ続け、交渉を有利にさせようとする」といった様なことを彼らは言っていたのであった。
この辺りが他の大統領、例えばイラクに対して戦争を始めたブッシュ元大統領などとの違いであるようだ。
イラクのサダムフセインが「大量破壊兵器(たぶん原爆に類する兵器)を隠し持っている」
というCIAだか、からの「動かぬ証拠をつかんでいるから」と云う事で彼は戦争を始めた。
結局その「動かぬ証拠」は最後まで見つからずCIAだかの、誤った情報に翻弄されて独裁者サダムフセインは捉えられ、殺害された。
この根拠のない「動かぬ証拠」によって国際社会は大きく翻弄され、多国籍軍を編成しイラク攻撃に加担した。この中にはわが日本ももちろん入っている。小泉元首相の時であった。
私はこの一連の騒ぎに当時のイギリスのブレア首相が、ブッシュ大統領に加担し積極的にイギリスの軍隊を派遣したことに、一種の戸惑いを感じたことを覚えている。
南部共和党出身のブッシュ大統領は頭がピーマンで、取り巻きのネオコンと云われるブレーンの進言をそのまま受け入れるような人物で、大国アメリカの責任ある大統領とはみなされていなかったから、である。
他方ブレア首相はイギリス労働党出身で40代前半の、クレバーな政治家だとイメージしていたからである。
結局当時のブレア首相も「動かぬ証拠」を確認しないまま、同盟国アメリカに追従しただけであったのだ。この時に比較的慎重だったのはフランスとドイツであったように記憶している。

今回のイランへの攻撃に関してもまたイギリスは早くも、アメリカの行動を支持する声明を出している。すでに辞任を表明しているメイ首相の政府である。やはりイギリスは同盟国アメリカに追従するのであるな、と私は認識を深めた。
それに対してドイツやフランスはやはり慎重である、今回もまた・・。これは大切なことであり同時に賢明なことである、と私は感じている。
イラン戦争の時の教訓が生かされているからである。
日本の今の首相は小泉元首相よりは慎重であるようで、直ぐにアメリカを支持する声明や行動は起こしていない、そのことは冷静でよいと私は想っている。
イラク戦争の教訓が生かされていると思われる事や、イランと日本との長くて太い関係が単純な判断を採らせていないのだろう、と推測している。
いずれにせよ今回のイラン攻撃をアメリカ政府内で声高に主張しているのは、今回もまた「ボルトン安全保障担当補佐官」のようだ。彼はイラク攻撃の時にも積極的に攻撃することを主張したネオコン(新保守主義者)の一人である。
彼の頭の中は冷戦時代のアメリカの価値観とは大きく変わらないようで、民主主義国VSその他の国という構図であるようだ。
しかし花札大統領はブッシュ元大統領とは違って、ブレーンの主張を鵜呑みにはしない人物なので、最後は取り巻きたちの言葉には従わなかったようだ。
これは彼の価値観というか行動原理の一つでもある「ワンマン」の反映であろう。
やはり彼はビジネスマンなのである。それも「ワンマン経営者」なのであろう。
政治的信条やイデオロギーではなく、「ある種の合理性」や「費用対効果」の釣り合いを大切にしているのであろうと思われる。
そしてそのような彼であるから、昨今ニュースになり始めている「日米安保条約のアンバランスへの懸念」が口に出て来るのだと、私は理解している。
この問題は改めて日本の保守層や革新層と云われる人たちに、大きな一石を投じる事に成るだろうと、私は予測している。
それにしてもイランはイスラム教の最高指導者という名の、宗教指導者が支配する国である。このアメリカ大統領の「ある種の合理性」や「費用対効果」の近代資本主義的な価値観が、通用する国では無いという懸念は、これからも付きまとって来るであろう。したがって我々も楽観視ばかりもしていられないのである。
何せホルムズ海峡経由で日本や世界に流通する石油は、世界の20~30%のシエアを有しており我々の日常生活に直結し、ガソリン価格の高騰を始め大きな影響を被ることに成るからなのである。