今日は今年の土用の丑の日、という事らしい。
土用の丑の日といえば思い出すのは、やはりウナギであろう。
ここ数日来の本州の厳しい暑さの中で暮らしていれば、ウナギを食べたくなるのはよく理解できる。
私自身本州に居た時はこの時期に成ると、頻くウナギを食べに行っていたものだ。
私が贔屓にしていたウナギの店は、千葉県の利根川沿いに在る川魚を料理してる店である。
坂東太郎と称された利根川は言うまでもなく、関東平野を縦断する大河で、またよく氾濫する暴れ川であった。
その利根川の下流、太平洋まではあと10~15kmという距離にその店は在る。
千葉県栄町安食地区がその場所である。
安食は名前からして食べ物に縁のある町であるが、その店は利根川から200mとは離れていない場所に在る。
私がその店を知ったのは今から30年近く前のことである。知り合いの人に連れて行ってもらったのである。
その店のウナギは旨かった。大きさもそれなりにではあるが身が締まっていて歯ごたえも良かった。タレも私の好みに合っていたのだが、とにかく美味かった。
東京の街なか辺りで食べる、妙に柔らかくて歯ごたえのないウナギとは明らかに違っていた。


私にとってのウナギの味は、子供の頃父親に連れられて行ったJR身延駅近辺の富士川沿いにあった和食の店で食べたそれが、基準に成っていた。
今から50年近く昔のことだから、多分天然ウナギを食べていたのだと思う。いけすに入っていたウナギの腹が黄色かったことを覚えている。
回数自体はそう多くはなかったが、いずれにしてもその時食べたウナギが私にとっては基準であった。
で、その安食の店で食べたウナギの味は、まさにその店で学んだ基準に合格していたのだ。
それ以来私がウナギを食べに行く先は、その店に決まってしまった。
たまに職場の近くに在った築地でもウナギの店として有名な店で食べることがあったが、残念ながらその著名な店のウナギは私の基準には合っていなかった。
柔らかくて歯ごたえの無いウナギは養殖ウナギだと推察され、ほとんど利用することが無かった。
そして今私は北海道に居る。
北海道に来てからは土用の丑の日は全くと言ってよいほど、縁が遠くなっている。
初夏を思わせるこの地の気候では、身体がウナギを欲しないのである。
やはり気温が35度以上無いと、敢えてウナギを食べようという気には成らないのだ。これもまた自然の摂理であろうか・・。
灼熱の本州に居て、ウナギをうまく食べる喜びを味わい続ける事よりも、冬は極寒であるが夏は初夏の気候であるこの北海道の南十勝で、ウナギを敢えて食べたいと思わない生活を選ぶかの二者択一を迫られるとすれば、迷うことなく後者を選ぶ私である。
そんな私が次にウナギを食べたくなるのは、いったいいつに成るのだろうか・・。



